バイク免許の取得者数はどう推移している?

免許証

長い間、国内のバイク市場は縮小傾向にあり、若者のバイク離れとともに免許取得者数も右肩下がりが続いていると言われてきました。しかし、ここ数年の動きを見ると、その長いトンネルを抜け、明らかに潮目が変わってきていることが分かります。かつては減少の一途をたどっていた二輪免許の新規取得者数が、底を打ち、増加へと転じているのです。

この背景には、社会情勢の大きな変化が影響しています。世界的な感染症の流行により、満員電車やバスといった密になる移動手段を避ける傾向が強まりました。その結果、個人の移動手段としてバイクが再評価されたのです。通勤や通学のために免許を取得する人が増えただけでなく、他人と接触せずに楽しめるレジャーとしてツーリングが注目されたことも大きな要因です。キャンプブームと相まって、一人で自然の中へ出かけるための足としてバイクを選ぶ人が急増しました。これは一過性のブームに留まらず、バイクという乗り物が持つ利便性や趣味性が、現代のライフスタイルに再びフィットし始めたことを示唆しています。

減少傾向から一転して増加の兆しが見え始めました

かつて日本では、高校生によるバイク事故の増加を背景に、免許を取らせない、買わせない、運転させないという運動が全国的に展開された時代がありました。この影響は長く続き、バイク免許の取得者数は長らく減少トレンドにありました。しかし、近年の統計を見てみると、その減少傾向にブレーキがかかり、年によっては前年を上回る取得者数を記録するなど、明らかな回復基調にあります。

特に注目すべきは、普通自動二輪免許の取得者数が増加している点です。これは教習所に通う生徒の数が増えていることを意味しており、一時期は予約が取れないほどの混雑を見せる教習所も多発しました。これまでは生活の足として原付免許を取得する層が一定数いましたが、原付一種の出荷台数減少に伴い、原付免許の取得者は減っています。その一方で、より趣味性の高い250ccや400ccのバイクに乗ることができる普通自動二輪免許や、制限のない大型自動二輪免許を目指す人が増えているのが特徴です。

これは、バイクを単なる安価な移動手段としてではなく、人生を豊かにするための趣味の道具として捉える人が増えていることの表れでもあります。バイク業界全体が長年取り組んできたイメージアップ戦略や、各メーカーによる魅力的なニューモデルの投入が、免許取得という具体的な行動として数字に表れてきていると言えるでしょう。

女性ライダーとリターンライダーが数字を押し上げています

免許取得者数の内訳を詳しく見ていくと、以前とは異なる層が積極的に免許を取得していることが分かります。その筆頭が女性ライダーです。かつてバイクと言えば男性の乗り物というイメージが強く、免許取得者の大半を男性が占めていました。しかし、最近では女性の免許取得比率が徐々に高まっています。SNSや動画投稿サイトを通じて、女性が颯爽とバイクを操る姿や、楽しそうにツーリングをする様子が発信されるようになり、それに憧れて教習所の門を叩く女性が増えました。足つきの良いモデルの登場や、おしゃれなウェアの充実も、女性がバイクの世界に入りやすくなった要因の一つです。

また、もう一つの大きな勢力がリターンライダーです。若い頃にバイクに乗っていたものの、結婚や子育て、仕事の忙しさなどを理由に一度はバイクを降りた40代や50代の人たちが、子育てが一段落したタイミングで再び免許を取得したり、大型免許へのステップアップに挑戦したりするケースが増えています。経済的に余裕が出てきたこの世代が、かつての憧れを叶えるために大型バイクの免許を取得する動きは活発で、これが全体の数字を下支えしています。彼らは大型バイクの販売台数を支える主要な顧客層でもあり、免許取得者数の推移とバイクの販売動向は密接にリンクしています。若者の新規取得だけでなく、こうした中高年層の回帰も、近年の数字を読み解く上で欠かせない要素となっています。

取得される免許の種類にも変化が起きています

取得者数の増減だけでなく、どの種類の免許が選ばれているかという質的な変化も見逃せません。近年顕著なのが、小型限定普通二輪免許の人気の高まりです。これは125ccまでのバイクに乗ることができる免許ですが、法改正によって取得にかかる日数が短縮されたことで、週末などを利用して手軽に取得できるようになりました。維持費が安く、通勤や買い物に便利な原付二種クラスの人気爆発に伴い、この免許を取得する人が激増しています。

さらに、オートマチック限定免許を選択する人の割合も増えています。かつてはバイクと言えばギアチェンジを駆使して走るものでしたが、現在はビッグスクーターだけでなく、クラッチ操作のいらないモデルも増えてきました。操作の複雑さに対する不安からバイクを敬遠していた層が、AT限定免許という選択肢によってバイクライフをスタートさせています。特に都市部での移動をメインに考える層にとっては、スクーターの手軽さは大きな魅力であり、それが免許取得のハードルを下げています。

また、電動バイクの普及を見越して免許を取得する動きも一部で見られます。電動バイクの多くはオートマチック操作であるため、将来的なモビリティの変化を感じ取り、まずはAT限定で免許を取っておこうと考える人もいます。このように、単にバイクに乗る人が増えた減ったという話だけでなく、どのような目的で、どのようなバイクに乗るために免許を取るのかという動機が多様化しているのが現在の特徴です。数字の向こう側には、人々のライフスタイルの変化や、バイクに対する価値観の多様化が鮮明に映し出されています。
参照元: 警察庁 交通局運転免許課「運転免許統計」